莉子は、たくさんの店を知っていた。
 栞は、親友の意見を聞き、楽しそうに品物を選んでいた。


 漠然と、彼女たちとの距離があるように感じる。



 線を引いてるつもりはない。
 壁を作ってるつもりもない。


 けれど、彼女たちのようになりたいかと訊かれたら、柚月は答えに詰まってしまう。




 東雲や【月鎮郷】のことがなければ、普通の女の子になれたか。



 そんな疑念が頭を掠めるのだ。

 どう頑張っても、彼女たちのようにはなれない。
 なりたいとすら、言いきることもできない。