彼だって未消化な想いがあっただろうに、わざわざ幻術の桜を柚月に見せてくれた。
けれど、あの一件をどう解釈すべきか、いまだに悩んでいる。
東雲の考えていることなんて、わかるはずもない。
訊いたって、答えてくれるかどうか。
次に会った時、どんな顔をすればいいのか。
利用されているのに。
一方的な関係なのに。
あの時の東雲は、それだけではないような気がした。
親友はスプーンで残り少ないミルクティーをかき回しながら、ぼやく。
もちろん、柚月の心情など知らないはずなのだが。
「そうかな? わたし、東雲さんの見る目はあると思うけど。柚を選んだ時点で」
「柚が?
運動神経以外、見た目も頭もフツーじゃん」
莉子が不思議そうに首を傾げる。
全くもってその通りだが、本人を目の前に言うか。
視線で抗議してみるものの、莉子には通じなかった。
一方の栞は、曖昧に笑うだけで何も答えない。
どちらの意見にも、肯定も否定もするつもりがないのだろう。
そこで、柚月はふと気付いた。