あんな毒を吐く陰陽師など愛でようものなら、胃に穴が開いてしまう(少なくとも柚月は、そうだ)。
そんな不毛なやりとりを見かねたのか、栞が助け船を出してくれた。
「なんかねぇ、忙しい人みたいよ。仕事も不定期だし、いつも呼び出しがいきなりだもんねぇ」
「それは、いやだな。忙しい男って」
親友の言葉に、莉子は早々と興味が失せた。
やはり、仕事が忙しくて構ってくれない恋人は遠慮したいらしい。
でも、また違う話題の時には「稼げない男はいやだ」とか言うに決まっている。
その点では、親友の好みに東雲は合わないだろう。
ヤツは警察みたいな仕事をしていて、人手が足りないといつも愚痴ってる。
給料も低いらしく、抱えた使用人を食わせいくのに苦労しているようだった。
せっかくの美形でも、交際を躊躇う理由は多々あるだろう。
などと、柚月がぼんやり考えていれば、栞の明るい声が割り込んでくる。
「でも、すっごく柚のこと信用してるのよね。どんな時だって柚がいないと仕事ができないって呼び出すんだから」
そりゃ、そうだ。
荒っぽい仕事は柚月に回してくる。