もう冷めかけたパスタをフォークに巻きつけながら、指摘してくる。

「先週まで、すごくイライラしてたよ?」

「うん。カルシウムの不足かと思った」


 莉子まで口を揃えて頷く。
 彼女まで同意見なら、本当に刺々しい態度だったのだろう。

 反省の意味を込めて、柚月は渋々と白状する。

「特に、決定的な何かがあったわけじゃないのよ。ただ……」

「ああ、東雲さんのこと?」

 栞の何気ない一言に、デザート代わりに頼んだクリームソーダを噴き出しかけた。
 目を丸くした親友が「あらあら」と、備えつけのナプキンを抜き取る。

 ひとり残された莉子が、きょとんとした表情で尋ねてきた。



「男か?」

 栞から渡されたナプキンで口元を押さえる。
 今、このタイミングで東雲の話はしたくない。


 何となく柚月が沈黙していると、栞は意味深な笑顔を浮かべる。

「そう。ボランティアの主任さんなのよねー?」

 否定はしなかった。
 しかし、異世界の召喚士だとも言えない。

 可能なかぎり東雲にまつわる詳細を削ったら、そういう結論へ落ち着いた。