くせ一本ない長い黒髪に、くっきりとした顔立ち。

 Gジャンにスカート。ロングブーツが彼女の凛々しさを存分に引き出している。

 ただ、ところ構わず「彼氏(おとこ)がほしい」と騒ぐので、せっかくの美貌との落差が激しい。
 さらに、そう言っている内は成就しない夢だろうと柚月を含む周囲の人間誰もが薄々、感じていた。



 スプーンをくわえながら、柚月は改めて思う。



(私、かなり離れちゃったなー……)



 異世界に召喚され、盗賊たちと戦う代償なのか。


 彼女たちのような日常は、遠い存在になった。

 彼氏が欲しいとか、プレゼントがどうとか。

 もし東雲に呼ばれることがなかったら、彼女たちの輪に入れたかもしれないのに。



 感覚が麻痺しているのか、悲しいとすら思わなかった。

 ウルトラな人として呼び出される現状で、ないものねだりしても仕方ないと割りきる。



 柚月が食事を再開すると、不意に視線を感じた。

 顔をあげれば、もう一方の美少女が柔らかに微笑んでいる。
 見たもの全てに安らぎを与えるような優しい表情だった。