柚月には、憧れの人がいた。
人生の師といおうか、ケンカの師匠といおうか。
強くて優しくて、何でも知っていて。
目指すべき憧れの先にいる人だった。
『自分の好きに生きな。どうせ、それ以外うまくやれやしないんだから』
その師匠が、よく口にしていた言葉。
当時の柚月は幼すぎて意味を理解できなかったが、人が人として生きていく上で、とても大事なことを教わった気がする。
けれど、実際は迷ってばかり。
ちっともやりたいようにやれない。
夢に描いた憧れの人には届かず。
柚月は不安だった。
今の自分を見たら、師匠はどう思うだろう。