そんなどうでもいいことを考えていると、長谷川は咳払いをして話題を切り出した。

「声をかけられた理由がわかりませんか? まずは、その髪の色。折った膝上スカートにショートブーツ。それらは、全て校則違反です」

 いきなりオブラートにも包まない生徒指導だ。
 柚月は辟易しながら、前髪を指でつまんでみせた。

「これ地毛なんだけど」

「その証明は?」

 当たり前のように問われ、うんざりする。

 柚月が通う朝吹(あさぶき)高等学校は、長谷川のような熱心な風紀委員が多いせいか、こうして放課後でも生徒指導を頻繁に行っていた。
 その甲斐あって、他の学校よりは生徒が自主的に校則を守るようだが、柚月にとっては迷惑以外のなにものでもない。

 早く帰りたい気持ちを抑え、のらりくらりと相手をする。