「それに、あの不良たちが初犯だと思ってんの? 見るからにわかる、自分より弱い立場の小学生を選んでた。きっと彼らにお金を取られた人は、他にもたくさんいるわよ。
なのに万が一、犯人を逮捕できたとしても、全額が持ち主に戻ることは難しいでしょうね。相手は未成年だし、取られたお金は少額で、相手もいちいち覚えてないから…………でも、そんなのって理不尽じゃない。
たかだか、口が切れるぐらい蹴ったってなんぼのもんだっての? あんたは被害者の苦痛の前に、加害者の人権を主張するわけ?」
柚月の静かな言葉に、漆黒の瞳に険を宿す。
今まで無表情に近い日下部が、はっきりと不快感を表したのだ。
「口が過ぎるぞ、蒼衣。おまえは警察でも検察でもない。現時点では、おまえのしていることはただの暴力行為だ」
「だったら、私を警察に突き出しなさいよ。それが一般市民の義務で、正しい方法なんでしょ」
咎めた日下部の方が、一瞬だけ眉根を寄せた。
間髪入れずに反論した柚月が、あまりにも堂々としていたからか。
あるいは、『その時は思いきり抵抗してやる』と物語っている強気な瞳に気圧されたのか。