問題児とはいえ、他人を追いかけ回して報告書を作るとは。

 この学校の風紀委員は、よほど暇人の集まりなのだろう。


「一昨日の夕方、他校生と乱闘騒ぎをしたというのは本当か?」

「……証拠でもあるの?」


 溜め息でも出そうな表情の柚月は、ベタなセリフを吐いた。
 犯行を自供したも同然だが、日下部の調査内容がどれほど信憑性のあるものか確かめる狙いもあった。

 すると、副委員長は手品のように黒革の手帳とICレコーダーを掌に出現させる。

「被害者の三人は、裂傷に打撲、全治二週間の怪我だそうだ。彼らの証言も名前も調べてあるし、騒動の発端になった小学生の証言もとってある」

 お見事と言うほかない。

 さすがは、朝吹の閻魔大王。
 ぐうの音も出ない確実な証拠を揃えていた。

 柚月が内心で感心していると、日下部は話を一気に進めてくる。

「言い訳があるなら聞こう。このままでは、俺が見聞きしたことを警察に通報しなければいけなくなる」

 そこで、柚月の眉がスッと平坦になった。