透き通るような優しい笑顔。



「笑っていろ」



 言われて、それが東雲の言葉だと理解するのに時間がかかった。
 どんな意味か計りかねて、どくりと心臓が跳ねる。



「もともと不細工なんだから、沈んだ顔してるともっと不細工になるぞ」

「なッ……!」

 怒鳴りかけて、すぐにやめる。
 また意地悪な笑顔に戻っているが、いつのものように言い返す気にはなれなかった。


(一応、元気づけてくれたのかな)


 素直には信じられない。
 とはいえ、今の状況を説明する理由を他に思いつかない。


 東雲にとっては、意味のないことをしている。
 柚月にとっても、意味がない。



 でも、不快ではなかった。
 胸に残る温かさと、締めつけるような切なさ。



 何をどうするか。
 何を言うべきか。

 初めての東雲の言動に柚月が混乱していると、彼はさっさと踵を返してしまう。



「漣!」



 思わず呼びとめたものの。
 また「ごめん」と口にしかけて、慌てて呑み込む。

 彼の気持ちを無駄にする気か。
 今度こそ、言わなくては。