説明する東雲の手に白の花弁が舞い落ちる。
 指先に触れる途端、弾けて光の粒子が瞬く。

「あ……」

「子供騙しの術だよ。僕の【言霊】は長く保たないし、本家には敵わない」

 今度は、柚月の手の中にいる白狐を見つめる。
白夜と視線が合えば、周囲に青白い炎が浮かびあがった。
 狐火というものだろうか。


 掌サイズの狐なのだから、普通の動物ではないと薄々予想していたが。

 幻術を操る能力があると東雲は言いたいようだ。



 青白く燃える炎が桜の花弁と混じり、消えていく。
 そんな幻想的な景色をしばらく眺める。



「きれい……」

 口にしてから柚月は、しまったと思った。

 隣に立つ東雲が皮肉を言ってくるに決まってる。

 語彙が少ないとか、らしくないこと言うなとか。
 ただ黙っていても、あれこれ文句をでっちあげる男だ。

(ああ、また馬鹿にされるわ……)

 柚月が諦念に似た気持ちで、東雲の顔を盗み見る。


 見て、目を瞠った。
 そこにあったのは、いつもの意地の悪い笑みではなかった。