その様子があまりにも強引だった。
 柚月は警戒しながらも、東雲の手を覗き込む。

 眼前で開かれた掌を見て、

「わぁ……!」

 柚月は感嘆の声を洩らした。

 彼の掌には、尾が九つに裂けた白狐が鎮座する。

 視線が合うなり、小さな顔をくりっと傾げた。

 か、可愛いい!

「この子、名前は?」

「……【白夜(びゃくや)】だ」

 掌にいる狐に指を差し出すと、東雲の指の間から前足をのばしてきた。

 人懐こいのか、好奇心が旺盛なのか。

 こうなってくると触りたい。

 けど、先ほど彼の要求を突っぱねてしまっただけに妙な負い目がある。
 ここで白夜に触りたいと言ったら、図々しくないか。

 でも、触りたい!

 そんな葛藤をしていると、東雲が柚月の掌に白夜を乗せてきた。

「……いいの?」

「そのつもりで呼んだ」

 さらに負い目は深くなるものの、柚月の手に降りた白狐はちょろちょろと彼女の腕を駆けのぼった。

「あ……ッ、ちょっ……ちょっと!」

 一気に肩までのぼり詰めた白夜は、柚月の首筋にすり寄った。