「…………」

 召喚されてからの柚月は、しばらく無言だった。
 正確には、文句を言う気力さえない。

 ただし、不満と怒りは掃いて捨てるほどある。
 柚月は、目の前の元凶を思いきり睨みつけてやった。

「ようこそ。次元の狭間を…………どうした? 今日はえらく不機嫌だな」

 いつも通りの口上を述べる途中、東雲は言葉を切った。


 そりゃ、そうだっつの。
 無事着地ができた柚月は盛大に顔をしかめて、ショートブーツを脱ぐ。

 召喚された場所は、東雲の邸内だろう。
 ハイソックスの足になってから、こんな状況でも気を遣う自分が馬鹿馬鹿しくなる。



「……どういうつもり?
 今週は、もう呼び出さないでって言ったでしょ」

 黙ってる方が馬鹿馬鹿しい。
 苛立ちをぶつけるように、棘のある言い方をした。

 そもそも最初に『しばらく呼び出さない』と口にしてきたのは、ヤツの方だ。

 苑依から事情聴取した後、調べたいことができたとかほざく。
 柚月にとっては渡りに船だった。