「────はッ!」

 すぐに我に返った柚月が気付くも、後の祭りだった。

 側にいる男たちは腰をぬかし、がくがくと震える。
 彼らは化け物を見るような目で柚月を見つめていた。


 その表情以上に、彼女の顔からは血の気が引いていく。


「しまった……」

「どうせ、こうなるんだ。必要ないでしょ」



 何もかもを見透かしたように、ぼやく青年の声。


 文句を言うために柚月は振り返るが、青年の姿がない。

 いつの間にか、少し離れた木陰の下で袴についた土埃を払い落としている。
 ちゃっかり自分だけ避難していたらしい。




 やっぱり、ムカつくな!
 この野郎ッ!