「お前達は、全員野球じゃなかったからだ。こんなにも人数が居て、仁のミスをカバーしてあげるような声かけやプレーが誰もいなかった」

「だから負けたんだ。野球は一人で背負いこんだ瞬間負けだ。相手は9人でまとまって攻撃してくるのに、自分達が自分のことしか考えていなかったら、負けるのはどっちかわかるよな?」

全員野球。その言葉が胸が熱くなる。

多分皆も響いたんだと思う。

しっかり前を向いて監督の目を見て、誰一人耳だけで下を向いて聞いてる人はいない。

心でそのメッセージの重要性を一人一人考えてるんだね。

このチームがまとまった瞬間を私達三人はこの目で確かに見た。

「明日のもう一戦、勝たなければ地区予選通過はまずない。だから絶対勝とう」

太一が力強く、はっきりと言って、ミーティングは終了した。

仁も、先程のように落ち込んだ顔ではなくてやっと緊張から解放されたようないつもの可愛い笑顔をしていた。

「璃久、悪いけど明日は頼むぞ」

「頑張るよ。お疲れ様な、仁」