前を見て歩く遼の後ろを歩く。
ちょ…ちょっと!

「歩くの速い!もうちょっと遅く歩くの!迷子になったらどうするの?」

こんな広い建物だもん。
方向音痴だから私、絶対迷う。

『あぁ。すまん。俺、脚長いから。』


ぬぅぁんだとぉ!!!
脚が長い?お前のか?


ズボンの履き方のせいですごい短足になってたから初めて知ったよー。

あえて口には出さず、心の中で罵る。



あれ…?フフ…。やっぱ、優しいじゃん。


いつの間にか遼は私の横に来てて歩くスピードを私に合わせてくれていた。


「バーカ。」

ツンデレなんだからー!


中学校1年の時の競歩大会(30キロを1日で歩ききる)も何だかんだ言いながら私にスピード合わせてくれてたよね。

 

わたし知ってるよ。
遼が本当は優しいこと。


でも…友達としては好きじゃない!
チビとか罵ってくるから!



でも。

「ありがと…。」

呟く声は遼には聞こえてないと思う。