何故か一緒に踊ることになってしまったフローラは、ブライアン王子に手を引かれて会場の真ん中へ。


フローラに注がれる痛いほどの視線は、間違いなくブライアンを狙っている女子からの視線だろう。




音楽が始まると、最初はブライアン王子の優雅なリードで踊ることができた。





ーー私、前にも踊った事がある…!




慣れてくるとフローラは感覚を思い出し、ブライアンに応えるように踊っていた。





「ダンス、お上手で。」


「言うほどでもないですよ…」






ブライアン王子は小声で囁いてきたが、フローラの頭の中は記憶で混乱していた。





ーー私、記憶がなくなる前は一体何だったの…?


ーー私の名前は本当にフローラ・ローズなの…?


ーーあの手紙は誰からなの…?



ーーそれに…さっきエリックが言いかけた事は何だったの…?何を言おうとしたの?








だが、考えているうちにダンスは終わってしまった。





「フローラ様、よろしければ次も…踊っていただけますか?」


「あ、はい…」






フローラはぼんやりしながら適当な返事をすると、イエスと受け取ったブライアンは嬉しげだった。