「……岬…さん……」


胸元から聞こえた、玲奈のか細い声。

俺の言葉に、信じられないといった声も交じっている。

それも当たり前だ。
俺は一度、玲奈を騙した身。

そして玲奈が嫌うジャンルの人間。

だけどそんなの、気にしてほしくなくて
信じられないというのなら、信じてもらえるまで傍にいる。


「玲奈」


もう一度名前を呼ぶと
そっと顔を上げ、俺の顔を見た。


化粧っ気のない顔。
だけどしっかりとした顔立ち。

彼女の顔に、メイクなんて必要ないけど
もしそこに、メイクを乗せたら、どれほどの映えた顔立ちになるのだろう……
そんな興味さえも湧き出てくる。


「どうすれば、信じられる?俺のこと」
「……」


問いかけられる言葉に、ただ口ごもった。


方法なんてない。
信じるか信じないかは、自分の気持ち次第だから。


そんなこと分かっていても
そうやって問いただす俺は、かなりの意地悪な男かもしれない。

だけど確かなものが欲しかったから……



「……それはこの先の、岬さん次第です」



ほら、
いつだって彼女は、俺を困らせる返答をする。