「………いつ渡せばいい?」
正直、美空ともう一度会うのは気が引けていた。
今の俺は玲奈と付き合っているわけで
元カノと会うとか、モラルに反するって分かってるから。
それでも、美空の母親にたいする気持ちとか知ってたから、形見となるこのピアスを俺が持っているわけにもいかない。
これを渡すだけなら……。
《明日、午前中からポスター撮りが入ってるの。その前なら……》
「ん。朝一ってことね。スタジオどこ?その近くまで行くよ」
《ありがとう》
それから、待ち合わせの詳しい場所や時間を決めて、後ろめたさいっぱいで電話を切った。
そうは言ったけど、果たして本当に俺は、あのピアスをなくさずに持っているのか……。
電話を切ったあと、すぐに棚の一番下から箱を取り出して、乱雑にしまわれているそこを漁った。
「……はっ…本当にあった」
分かっていたけど、箱の片隅に放置された、シルバーのピアス。
懐かしさで、少しだけ胸が締め付けられた。
そっと手に取って、明日慌てないよう、見えやすい棚の上に置いておく。
明日になったらこれを持って美空に渡して、あいつとは綺麗さっぱり縁を切るんだ。
ピンポーン……
チャイムが鳴ったのは、そんなときだった。