「え、なんで一緒に降りるの?」


金曜日、仕事に追われ、終わったのは22時過ぎ。
ナイスタイミングだったのか、向こうが合わせてくれていたのか分からないけど、凌太と一緒に電車に乗り込んでいた。

私の駅のほうが近いので、先に降りるのはいつものことだったけど……


「なんでって、玲奈んち行くからに決まってんじゃん」
「いや、もう遅いし。今から来たら、帰れなくなるじゃん」
「帰るつもりねぇっての」
「は?」


いやいや、何当たり前に言ってんの?
付き合ってるからって、簡単に泊まるとか言わないでほしいし……。


「明日。誕生日なんだろ?」
「え、あ……うん。知ってたんだ」
「当たり前。ってか、毎年盛大に祝ってんじゃん」
「あー、そうだったね。あれは地獄だったね」
「おいっ……」


言われて思い出した。
去年までの誕生日。

どこで聞いたんだか知らないけど、凌太は毎年私の誕生日を無駄にお祝いしていた。

もちろん、その時の目的は、私に好かれるためのゲーム感覚だったんだろうけど……。


「薔薇の花束とか、リアルにあげる人、初めて見たよ」
「俺も。あれは、冗談だったからあげられるんだよ」
「……」
「ごめんって!でも今年は、冗談とか一切ないから」
「……だといいね」


ほんと、素直じゃない自分。

もう凌太が私をからかっていないと分かっているのに、わざとひねくれた返事をしてしまった。