「玲奈に絶対似合うと思って。
 オレンジ系の色味」

「……初めてもらった。化粧品なんて……」

「普段全然しないもんねー。
 せっかく、化粧したら、もっと可愛くなるってこの前分かったのに」


陽平との問題があったとき、一度だけしてもらったメイク。

その時凌太がメイクの仕事をしていると初めて知ったけど、あれ以来またしてもらったことはなかった。

自分からして、とも言えるわけもなく
凌太も自分から口に出すこともなかったから。

あの時は散々褒めてくれたけど、実はただのお世辞だったのかも……。


「これ、今CMでやってる美空ちゃんがやってるやつだよ」
「みくちゃん?」
「やっぱ知らないかー。もともと雑誌モデルだったけど、今はドラマとかバラエティでもたまに出てる子。
 今度テレビチェックしてみて!超可愛いから」
「わかった」


俳優とかモデルとか、そういったことにはまるで疎い。

だから今、真央が美空ちゃんとかはしゃいでいるけど、正直そのテンションにはついていけなかった。


けど、せっかく真央がプレゼントしてくれたんだから、そのCMは一度は見てみたいな。


「あたしからは口紅しかあげられないけど、アイシャドーとかファンデとか、揃えてちゃんと化粧してみなよ。
 玲奈は絶対に可愛いんだから」

「……出費がかさむね」

「女子はみんなそんなものなの」

「はぁ……」


女子って大変なんだな……。

力説する真央に、ちょっとだけめんどくさくなった私の口からは、思わずため息が漏れていた。