「いい加減、認めちゃいなよ」
「な…に言ってんの。好きなわけないじゃん。私の理想は……」
「理想は理想。好きになるってのは、そんな理屈とか関係ないの」
言い訳の言葉も遮られ、正論のような言葉を突きつけられる。
理屈なんかじゃない。
そんなの分かってる。
嫌いだと思いながらも、いつも頭の片隅に岬さんの存在がいたから……。
「でも……向こうは私をからかって近寄ってただけだから」
その事実がある限り、私はやっぱり、自分の気持ちを受け入れることは出来ない。
「……からかいねぇ……。
そんなんじゃないと思うけどなぁ……」
「ううん。そうだよ……」
だって本人にそう言われたんだ。
「確かに最初はその気持ちだったかもしれないけど……。
第三者から見ると、凌太さんってここ最近、絶対に変わったと思うよ」
「え?」
「なんていうか、昔は玲奈にたいしても、他の子と同じような優しさを向けているだけって感じだったけど……
ここ最近は、玲奈にしか見せない意地悪な顔や、怒った顔があって、人間味があるなぁ…なんて思ってたもん」
まさか、真央がそんなふうに見ていたなんて知らず、ちょっとだけ驚いてしまった。
顔をあんぐりさせたまま見つめていると、真央はニコリと微笑んだ。
「それは、玲奈も一緒だけどね」
その言葉に、ピクンと反応した。