私がそう言うと、夢くんは表情を変えずに、固まってしまった。

あれ? 地雷?

「ぜんそく持ちだったの?」

「あ、ああ。そう。実は」

何かをとりつくろうかのように夢くんは激しくうなずいた。

「長距離とか走って大丈夫なの?」

「うん。――控えないとな、もう……」

その言葉に翳りを覚えたのは錯覚?

「ああ、そうだ。やっと俺、家出られるようになったよ。今度、入居するんだ。この辺の学生アパート」

「本当? おめでとう」

「明日は友だちがトラック借りてくれて、荷物運んでくれる予定なんだ。しばらく散らかってるとは思うけど。おいでよ」

「わぁ。いよいよね。行く行く。お祝いしないとね」

「風邪、治せよ」