「そんなこと言わないで。私は夢くんが好きなんだから。夢くんだから幸せでいられるんだから」
 
私は思わず夢くんの手を握った。
 
冷たくて、ごつごつしている手。
 
この手が、私を幸せにしてくれるの。

「あ~、もういい、解った解った」
 
嘆息とともに、想太が言った。

「目の前でいちゃつかれても、たまんないよ。あとはふたりの好きにやりな」

「想太……」

「……別れてやるよ」
 
小さな声で搾り出すように言う想太。
 
ちょっと、申し訳ない気持ちになった。

「ごめん、想太……」

「謝るなよ。余計、みじめになる」

「……うん……」
 
想太はゆっくりと立ち上がった。