傷つかない真実の話なんて、この世に何もないんだから。
 
知らない嘘の方が、ずっと幸せなのは解ってる。
 
だけど、私は誤魔化しきれない。
 
今、好きなのは、想太じゃなくて夢くんだ。
 
私はトレイに湯のみを載せ、夢くんの席へと戻った。

「お茶、3つ?」

「うん」

「そんなに喉渇いてるの? ジュースでも買ってきてあげようか」

「ううん」
 
私が持ってきたお茶は、私の分と、夢くんの分と、想太の分。
 
これから想太が来ることを知らない夢くんは、勘違いしているようだ。
 
私は座席に座った。
 
丁度、夢くんの隣に。

「隣に座るの?」
 
また夢くんが疑問符を打ち出してくる。
 
真向かいには、想太を座らせることにしようとしていたのだ。