だけど、今は。
 
夢くん以外の男のひとは、要らないの。
 
何の躊躇もなしに、夢くんの胸に飛び込んで行きたいの。
 
夢くんだって、いつまでもずるずると前の彼氏を引きずってる女なんて嫌だと思う。
 
早いとこ、カタつけなきゃ。

「色恋沙汰も、大変ねぇ」
 
ずっとカリカリとノートをとっていたさやかが、口を出してきた。

「聞いてたの?」

「嫌でも聞こえるわよ。私はまだ、恋なんてしなくていいな。面倒そうだもん」
 
髪の毛を小さい耳にかけて、さやかは言う。

「面倒、か。でも私は好きなひとに出会えて幸せよ」

「私にはよく解らないな。勉強してる方が楽しい」
 
確かに、恋は面倒かもしれない。
 
だけど、同時に幸福ももたらしてくれる。

「私は、勉強の方がめんどくさい!」
 
突然、寝ていたはずの鈴が高らかに言った。

私もさやかも、その堂々とした宣言に、思わず笑ってしまった。