私だって、想太を傷つけたくない。
 
けれど、想太のことを好きだと思わなくなったのは、確かだ。

「どうすればいいかな……」

「だから、想太くんの言う通り、その好きなひとを連れて行けばいいじゃない」

「うん……。だけど、納得してくれるかな」
 
帆乃香は相変わらず鼻の下にシャープペンを挟んで言う。

「で、梨聖の好きなひとって、海に行った時一緒に消えてったひと?」

「そうだよ」
 
その海で、私たちは出会ったのだ。

「マックで一緒にいたとこ見たけど、お似合いだったわよ。何ていうか、雰囲気がよかった。長年連れ添った夫婦みたいだったよ」

「その日に出会ったばかりだよ」
 
帆乃香は目を丸くする。

「そうなの? 海で?」

「そう」

「ナンパされたんだ」