「うん。そうだね。――ごめん」

「いえ」

私は落ちつきを取り戻そうと、ハーブティをひとくち、飲んだ。

ほんのり苦い。けれどスキッとする。

――さっき、渡海さんに“両親”と言ったけれど。

本当は、肉親ではない。

私は母親の、お姉さん夫婦に育てられている。

私の両親は、私がちいさい頃、事故で亡くなったらしい。

物心つく前だったから、実の両親の顔も何も覚えていない。

だから伯母さんにあたる人は、もう本当に実の母のようだ。

お父さん、お母さん、と呼んでいるし。

従兄弟にあたる人も、昔からずっとお兄ちゃんお姉ちゃんと呼んでいる。

別に意地悪をされたことも、差別されたこともない。

こうして、大学だって行かされてもらってるし。

人並みに幸せな家庭環境で暮らしてきた。