この間の一件は、後回しにすることにした。

“その、好きなヤツっていうの、連れて来い”と想太に言われた。
 
それをどう、渡海さんに切り出そうか……。

私が考えあぐねていると、ウェイトレスさんがオーダーしたものを持ってきた。

私の前に、ハーブティを置いたあと、“ごゆっくりどうぞ”と言い、彼女は去っていった。

「一緒に住まないか」

「――はっ!?」

私の大声に、去って行ったウェイトレスさんがこちらをふり返った。

私はあわてて口を手で覆った。

「す、住むって?」

「同棲だよ」

「ど、同棲……。出会ったばかりで?」

「時間なんて関係ないさ」

そう言うと渡海さんはコーヒーにミルクとお砂糖を入れ、スプーンでかきまぜた。

「渡海さん、実家じゃないですか」