「ブラジルでいい?」

「はい」

ブラジルとは、大学近くの喫茶店だ。

学生で賑わう店内はいつもコーヒーの香りが漂っていて、私は好きだ。

今日の渡海さん、黒いシャツにブルージーンズ。

足が長い。

少しくせっ毛のある茶色い髪。

背中を見るだけで、全身に動悸が走る。

私って、こんなに惚れやすいヤツだったっけ?

店内に入って、窓際の席に向き合う形で座った。

彼はブルマンを頼み、私はハーブティーを注文した。

オーダーしたものが来るまでの間、彼はアゴの前で手を組んで、じっと私を見つめた。

私は戸惑ってしまい、まばたきが多くなってしまう。

「な、なんですか?」

「いや――。君に、出会えて良かったと思って」