「連れてこい。その、好きなヤツっての。俺がそれで納得の行く相手だったら、別れてやる」
 
そんな熱い言葉を言うひとだったんだ、想太って。
 
別れ話で、そのひとの本性が出るっていうけど、本当だ。

「……でも、納得の行かない相手だったら……?」

「俺がかっさらう」
 
そんな素敵な科白を言われても、ぐっとくることはなかった。
 
私はもう、想太のことは、好きじゃない。

自覚した。

「……解った。じゃあ、そのうち」

「……ああ」
 
想太は頷くと、隙をついて、私にキスをした。
 
今度こそ、私と想太の唇が、重なった。

「……!」

「じゃあ、俺は行く」
 
すっと立ち上がると、想太は走って行ってしまった。

私は何故か、涙を流していた。
 
服の袖で、口許を何回も拭った。
 
溢れる涙が、とってもしょっぱかった。