その間、私たちは、見つめ合っていた。

まばたきもせず。まるでお互いの顔を目に焼き付けるかのように。

次に口を開いたのは、夢くんの方だった。

「昔から――心臓は悪かったんだ。でも、日常生活にはそんなに支障はなかったから、好きにやらせてもらってきた。――発症してからは、もっと自由にしてた。大学だって、入れてもらった」

天井のある一点を見、夢くんはぽつりぽつりとつぶやく。

「こんな体、壊れてしまえばいい、って。何度も何度も走った。あと5年だろうが一日だろうが、終わりが来るもんは来るんだろって。だから、走った。走っている間は、何も考えなくていい。風になれたんだ」

うん、うん、と私は小さく相槌を打つ。

「だけど、君と出会ってから――。なんで終わりがきてしまうんだろうって。もっと君といたいって。もっと君のこと、見ていたいって。女性になって、おばさんになって、おばあさんになるまで」

「嫌だよ。死なないでよ。私のこと見ててよ。生きてよ」

「――。君がこの大学に入ってきてから、ずっと気にかけてたんだ。だけど、こんな未来のない僕と関わったら、淋しくさせることは目に見えてた。でも、僕は我慢できなくて。結局、同棲にまで持ちこんで、わずか数ヶ月でコレだ。とんだドタバタ劇だよ。遊園地に温泉に、また、海に、色々なところに君と行きたかったな」