「そうなの」

「うん、嘘じゃない」
 
鈴から連絡をとったのではなく、たまたま偶然に学食で会ったということか。
 
夢くんの瞳は澄んでいて、嘘をついているようには思えなかった。

「鈴のことが好きなの?」
 
私とは質の違う、可愛らしい女の子だ。狙ったオトコは必ず落とす。

「まさか。俺の大事なひとは、梨聖ちゃんだけだよ」
 
そう言うと、夢くんは足許から崩れた。

「夢くん!?」

「はあっ、はあっ、はあっ……」

「発作? 薬どこ?」
 
私が夢くんを走らせたから、彼は発作をおこしたのだ。
 
私は慌てず、冷静に対処しなければならないと思った。

「救急車呼ぶ?」
 
私の問いかけに、夢くんは首を横に振る。

「薬、キッチンの棚……」

「解った」
 
私は夢くんを床に寝かせ、薬とお水の入ったコップを持ってきた。
 
夢くんの上半身を浮かせ、薬を飲ませてやる。
 
これで落ち着くといいんだけど――。
 
私は、一抹の不安を覚えていた。