と、言った。

「――何言ってんの、私が幸せになれるのは、夢くんの傍だけだよ!」
 
私を突き放すような物言いに、私は悲しさを通り越して、怒りさえ覚えた。
 
私は踵を返すと、走ってその場を後にした。
 
あんなことを言ったのは、夢くんは鈴のことが気に入ったから?
 
平々凡々な私より、可愛くてキラキラしている鈴の方がよくなったから?
 
あたまの中が、ぐるぐるしていた。
 
そして、私は習性で、夢くんと同棲しているアパートへと辿り着いた。
 
合鍵で、部屋を開ける。靴を脱ぎ捨て、慌てて中へ入った。
 
飛び込むようにベッドに身体を預けた。
 
夢くんの香りがする。柔らかくて、あたたかい。
 
私は涙を流していた。やっぱり、彼は鈴の方が良くなったのだろうか。
 
私と別れて、鈴とつきあうの?
 
そうしたら、同棲も解消だね。
 
また、他人のふたりに戻ってしまうの?
 
あの海岸で、声をかけられた日から始まった、私たちの物語。