涼くんは、ハーと息を吐き、改めて私に向き直った。
 
私の両手をとる。

「俺の、彼女になってくれないか、って意味」

「か、彼女? 私、彼氏いるから」
 
涼くんは、肩を落とした。

「――そうだっけな。ごめん」
 
彼は、私の手を離す。
 
何だか、悪いことをしている気分だった。

「また、飲みにでも誘うよ」

「うん。待ってる」

「じゃあ……」
 
涼くんは片手を挙げて、行ってしまった。
 
涼くんは、私のどこを気に入ったのだろう。
 
お母さんがいなくなる不安から出た言葉だったのかな。
 
なんて考えていたところ――。

「見~た~ぞ~、梨聖」