「よかったわ。梨聖ちゃんにお会いできて。未来のお嫁さんね」

「こちらこそ、お会いできてよかったです」

私たちはそうしてしばらくして、病室を出た。  

「悪かったな」
 
ぼそりと涼くんが呟いた。

「いいよ。これくらい」

「――テレビとか見ててさ、母親が“この子いいわね”ってたまに女優見て言ってたんだ。香林って、母親好みの顔してたからさ。何ていうか、素朴なところとか、目の輝きとか」

“梨聖”から“香林”に戻っていた。だけど、そっちの方がしっくりくる。

「そうなんだ。だから私だったのね。別にお安い御用よ」

「話あわせてくれて、サンキューな」

「とってもいいお母さんじゃない」

「……まあな」
 
余命が少ないとは思えない、思いたくなかった。
 
涼くんのお母さんとは、うまくやっていけそうだと感じた。