「孫だって。うふふふ、嫌ね、もう私、そんなトシかしらね」

「大学出て、しばらくしたら梨聖と一緒になるから。孫の話もそう遠くないぜ」

“梨聖”と名前を呼ばれてどきっとした。
 
そうか、お母さんの手前、仲よさげな風を見せなきゃいけないんだな。
 
それにしても、よくそんなべらべらと嘘がつけるな。
 
よっぽど、お母さんを安心させたいんだな。私は感心した。

「それじゃあ、私も長生きしないとね。梨聖ちゃん、涼なんかに人生預けていいの? この子、不器用だし、ぶっきらぼうだし、なにもいいところないわよ」

「涼くんは優しいひとですよ。一生ついていきます」

私も調子を合わせた。
 
すると、お母さんは目許を拭った。涙が零れたようだった。

「ありがとう。ありがとう。涼を、頼みますね」

「はい。任せてください」
 
私はポッケからハンカチを出して、お母さんに渡した。

「ありがとう。梨聖ちゃんはあたたかい子ね」
 
ハンカチで目頭を拭ってお母さんは言う。