ちょっと謎が解けてきた。
 
消毒液の独特の匂いがする廊下を通ると、ひとつの部屋の前で涼くんは立ち止まった。
 
部屋の前の備え付けのアルコール消毒ポンプで、涼くんは手を綺麗にした。

私もそれに続く。

ひとつだけのネームプレート。個室ということは、相当容態は悪いのだろう。

私はひとつ、息を飲んだ。

そして、深呼吸をした。

コンコン、と涼くんはノックをして病室に入る。

「母さん、来たよ」
 
私もおずおずと中へ入った。
 
ベッドの上に横たわっていたお母さんは、身体をゆっくりと起こした。

「涼」
 
その声は小さく、かすれていた。
 
長い髪をひとつの三つ編みにしている。
 
随分と痩せ細っているのは、元々の体質なのか、病気のせいなのか。