車は滑らかにすべりだした。

「タクシー使うだなんて……どこ行くの?」

「うん」
 
涼くんは生返事だ。
 
涼くんのお母さんに会うなんて、涼くんの家に行くんじゃないの?
 
涼くんの家って、タクシー使うほど、遠いところにあるの?
 
相変わらず、私のあたまは疑問だらけだった。
 
寡黙な彼は、タクシーの中でひと言も喋らなかった。
 
私も、黙っていた。
 
20分くらい走っただろうか、やがて車は大学病院に着いた。

「病院?」

「ああ」
 
涼くんは短く頷く。
 
お母さん、入院してるのかな。病気? 怪我?
 
それにしても、私を彼女として紹介したいだなんて、一体どういう理由なのだろう。

「はい、着きましたよ。ありがとうございます」