ま、私を誘った時点で、硬派でもないか、と思いなおす。

「今日は、シンプルだな」
 
涼くんは高い位置から視線を飛ばしてくる。

「すみません。この間は、化けてました」  

「そっちの方がいいよ」

「……どうも」
 
“素のままの梨聖ちゃんがいいよ”なんて、夢くんに云われていたら、天にも昇るような気持ちになっていたに違いない。
 
私は、こんなハンサム男子相手でも、怯まない。
 
気持ちは、ちゃんと夢くんに傾いていることを確信した。
 
すると、涼くんは私に背中を向けて、歩き出した。
 
あれれ、帰るのかな? と思った矢先、首だけをこちらに回して、私を見た。
 
――ああ、着いて来い、ってことね。
 
私はそう理解し、パーカーのポッケに手を入れて歩き出す彼の後ろに着いて行った。
 
歩くのが早い涼くん。私は小走りでついていく形だった。