お、お酒――。
 
私はその言葉に弱い。
 
まさに“麻薬”だ。

「……解った」

『よし。じゃあ、明日の7時に』
 
なるべく早い時期に、って何か魂胆があるのだろうか。

『駅前で、待ってる。じゃあ』
 
一方的に通話は切れた。
 
寡黙なひとなのに、果たして一緒に飲んで楽しいのだろうか。

「梨聖ちゃん。電話終わった?」
 
夢くんの声で、私は我に返る。ちょっと後ろめたさがあった。

「あ、う、うん」

「晩ご飯、できたよ」

「ごめん、一緒に作る約束だったのに、やらせちゃって」

「電話が来たのなら、仕方ないよ。さ、食べよう」
 
電話の相手が誰だ、とか聞いてこない。