片岡、とは鈴の名字だ。
 
あの子、私の知らないところで何教えてるんだろう。
 
わずかな怒りさえ覚えた。
 
だけど、相手は害がなさそうだ。
 
合コンに同席していた、あのチャラい大輔くんから来た電話だったら、速効電話を切っていたところだ。
 
涼くんの声は、ひとを落ち着かせる、深くて静かな声。
 
その声で、鈴への怒りも半減した。

「涼くん、何の用なの?」
 
合コンで、途中ですぐ帰ってしまった私に一体何用だというのだろう。

『今度、ちょっとメシでも食いにいかねえ?』
 
突然のお誘いだった。
 
私、気に入られちゃった?

「メ、メシって……」

『あんたならいいと思ったんだ』

「でも、私……」