ドキドキは最高潮に達していた。
 
私は胸の鼓動を抑えるのに必死だ。
 
体育座りをして、膝にあたまをくっつけた。

「梨聖ちゃん、美味しいな」
 
沈黙を破って夢くんが言う。

「……そりゃ、どうも」
 
私はそうとしか、応えられなかった。
 
頬が熱い――。
 
ザザン、ザザンと波の音が胸に響く。
 
冷たい海水で、頬を鎮めたかったけれど、夢くんの唇の痕がなくなりそうで、やめておいた。