いつもお姉ちゃんもお兄ちゃんも、私を気にかけてくれていた。

また、涙が出そうだった。

けれど、明るく笑って出て行きたかったから、我慢した。

「梨聖ちゃん、これ運んで」

冷蔵庫の前に立つお母さんが私を呼ぶ。

「うん」

お母さんが冷蔵庫から取り出したのは、ケーキの箱だった。

「ケーキ?」

「そう。今日は特別な日でしょ」

「何もケーキなんて用意しなくてもいいのに」

「いいの。お母さんが食べたいの」

そう言われると、返す言葉がない。

私は素直にいただくことにした。

色とりどりのケーキが5つ。

家族ひとりひとりの分だ。

箱を開けてみて、また涙が出そうになった。