そこで、コンコン、とドアをノックする音がした。

「梨聖ちゃん、お茶淹れたわよ」

お母さんだった。

「今行く」

お母さんはにっこりと微笑むと、ドアをゆっくりと閉めた。

その微笑みに、いつも救われていたっけ。

友だちと喧嘩した時も、テストで悪い点をとった時も、私を優しく見つめていてくれた。

よし、と私は腰をあげた。

皆の集う、ダイニングキッチンへと向かった。

「よう、梨聖。荷造りは終わったのか」

お兄ちゃんが私を見るなり言ってきた。

「うん。今終わった」

「梨聖は、いつも荷造りは当日なんだから。遠足で何回も遅刻しそうだったこと、忘れてるの?」

お姉ちゃんが苦言を呈する。