窓際に並ぶ机の、一番奥に彼はいた。

「夢くん」
 
思わず歓びの声が漏れてしまう。
 
夢くんはちらりとこちらを見ると、驚いたように目を丸くした。

「どうしたの、梨聖ちゃん。友だちは?」

「抜けてきた」
 
夢くんは柔らかな笑顔になる。
 
私は彼にゆっくりと歩み寄る。
 
何やら、レポートを書いていたようだった。

「課題?」

「ああ。まあ、こんなものやってても、意味がないんだけれども」
 
笑顔が消え、真顔で彼は言う。
 
その真意は、私にはまだ解らなかったけれど。

「なんだ、梨聖ちゃん、可愛い格好してるな」

「あ、ちょっとね。えへへ」
 
褒められて、照れてしまった。