スマホを持って、お店の誰もいないレジの前で夢くんに電話を入れた。

『TRRR……TRRR……TRRR……』
 
夢くんは、中々出ない。――やっぱり怒ってる?

『TRRR……TRRR……ガチャッ』
 
あ、繋がった。

「もしもし夢くん? ごめん、私友だちに拉致られて……」

『よかった。電話に出ないから、何か事故にでも遭ったのかと思った』
 
思いがけず、夢くんは怒ったりしていなかった。
 
いつもの夢くんの声のトーンだった。

「ごめん、まだ待ってる?」

『学校の図書館にいた。今もお友だちと一緒なの?』

「うん。でも、今すぐ行くから」

『いいよ、友だちと一緒にいなよ』
 
嫌味ではなく、心底言っているようだ。

「でも、夢くんと約束したのが先だから……」

『いいって、友だちも大事だろ』