「まあ、着いてきて」
 
あとちょっと、鈴につきあったら、夢くんのところへ向かおう。
 
鈴は私の手をとった。
 
やっぱり何か、急いでいるようだった。
 
連れてこられたのは、エスカレーターを下ったところにある、化粧品店だった。

「いらっしゃいませ」
 
綺麗にメイクした店員さんが、私たちを出迎える。

「この子の、ファンデを探してて」

「かしこまりました。普段はどんなタイプのお化粧品をお使いですか?」
 
鈴が“応えろ”と視線を寄こしてくる。

「パウダータイプです」

「さようですか。どこのメーカーとか、気になるものはおありですか」

「いえ、別に……」

「それではこちらへどうぞ」
 
私はガラス張りのテーブルに、高いスツールのあるカウンターへと導かれた。
 
何だか、従わなきゃいけない雰囲気で、言われるがままスツールに座った。