ふと、私が彼の横顔を見ようとして、視線を向けると、彼も同時に私のことを見、おもいっきり目が合ってしまった。

――どきん!

セピア色な瞳にやられてしまう。

だけど。だけれども。――目が離せない。

胸が高鳴っているのが解った。

360度パノラマ風景の中、この人しか見えていなかった。

「お腹、空かない?」

突然、彼が口を開いた。

「あ、朝から何も食べてないです――」

と私が返すと、彼は頭をポリポリとかきながら、

「良かったら、ご飯、行かない?」

そう切り出した。

私はこの言葉をナンパだとは受けとめなかった。

ただ、何となく。友だちをランチに誘うような軽さだった。

「――はい」

私も、同じような軽さで、頷いていた。