帆乃香が、夢くんに説明する。

「そっか」
 
ふわり、と体が軽くなるのを感じた。
 
また貧血? と思ったけれど、視界ははっきりとしていた。
 
地面が遠い。足が浮いている。
 
私は――夢くんに、お姫様抱っこされていたんだ。 

「ちょっ、夢くん」

「じっとしてな」
 
ひゅう、と帆乃香が口笛を吹いた。
 
公衆の面前で、こんなことされるなんて、恥ずかしい。

「この子、連れて行きますので」
 
夢くんは帆乃香と鈴にそういい残し、ゆっくりと歩き始めた。
 
私は観念して、夢くんの腕の中に収まった。
 
夢くんのシャツ、洗剤のいい香りがする。
 
甘くて、優しくて、まるで夢くんそのものみたいだ。
 
私は彼に酔いしれた。